よこと病気と○○と

1人の人間として、ありのままをツラツラと。お布団と社会の間から

私と病気と彼



「やばい、眠れない」



真夜中3時、彼からの突然のSOS


同じ病状をもった私より大人の彼
眠剤が効かなくて
金縛りにあって
そうとう滅入ってる様子


繋ぐ電話


無駄に明るい声の私と対照的な
疲れ切った彼の声



やばい、明日面接なのに
そっか、大丈夫だよ
起きれるかな
大丈夫、ちゃんと起きれるよ


永遠と繰り返される、
不安と大丈夫の駆け引き


の、後の
大人の彼の弱音事情

あー怖かった
本当怖かった

なんどもなんども呟く彼は
身ぐるみ剥がされた子供のように
弱々しく、震えてみえる


いい大人が恥ずかしい
大の男が恥ずかしい

そう、バカにするのは、簡単だ
 

でも、
そうやって理想のレールに押し付けて
一体何になるっていうのだろう

怖いものは、
いくつになっても、怖いものなのに



最後に彼は何度も言った

ごめん、ありがとう
ごめん、ごめんね
助かった、ごめんな
ごめん

ごめん

ごめん、、


うん、大丈夫、
君の気持ちはなんとなく、わかってるから

ごめんなんて言葉は
これっぽっちもいらないけど

言わずにはいられない事も
大丈夫、ちゃんと知ってるから



ごめんが尽きたころ

彼はありがとう
もう一回眠りに挑戦してくる
そう言い残して電話を切った



8:30

早めの朝食
カリッと焼いたトーストと
あつあつの紅茶をすすりながら

彼の事を考える


あの後ちゃんと、眠れただろうか?

今朝は起きれただろうか?  



彼の無事を祈る一方で
日に日に眠剤が効かなくなっていく自分に、
同じ恐怖を、重ねてみる

昨日寝たのは4時前のはずなのに
8時頃には目が覚めてしまう
二度寝は体が受け付けてくれない

それなのに起きた時には
これぞと言わんばかりの頭痛と吐き気
まるでオール明けの体


見た夢はほとんど、覚えている



もう一度、彼の事を考えてみる


彼の事、いや、自分の事


私が大人になっても、彼のように
一生をこの病気と共にするのだろうか

悩み、苛み、人に救いを求め続けるのだろうか

恋人は、結婚は、仕事は

私には、与えられる権利なのだろうか


今日も夕方からバイトだ
この後もう一度、
眠りにつけるだろうか

 

紅茶はすっかり冷め切った


そんな間のびした朝に


お父さんの
「いってきます」が勢いよく響く


「いってらっしゃい」を口に渡し
「ごめんなさい」を心に預けた



冷え切った紅茶を飲み干す


最後に、これから待つ
今日という悪魔に向かう、
彼の無事を祈っておく


悪魔さん
どうかもうこれ以上、苦しめないで


彼も、私も、他の、すべての人も




さぁ、朝だよ


心の中で何度も呟いたごめんが途切れた頃、私ももう一度、眠れるだろうか


おはよう世界


私は最後にそう言って
再びまどろみ始める。


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